Panasonicリニューアルコンテスト2024 大賞受賞
お施主様の負担を減らすリニューアル
~廃棄物処理施設等LED化ESCO事業~

評価のポイント
- 前回の失注理由から提案内容を徹底して見直すとともに省エネ効果も磨き上げ、電力使用量の削減率72.8%を達成。
- 各施設で異なる要望を施工管理計画書に落とし込み、21施設全てにおいてスムーズな工事進行を実現。
- 地元電設協会からの働きかけにより、地元中小企業の新規参入がしやすい環境を整備。関連する仕事は全て地元業者へ発注し、市内業者率100%を達成。
地元中小企業が初めて獲得したESCO事業
電設協会から市へ働きかけ、審査基準を緩和
弊社は1950年に東京電力の元社員たちによって創業し、今年で75周年を迎えました。東京電力様との資本関係はありませんが、東京電力様からのお仕事も多くいただいております。
現在、従業員数は300名。平均年齢46歳、平均勤続年数22年となっており、12年程度の勤続が平均とされている日本において、定着率が高い働きやすい職場であると自負しております。本事例の発表者である赤堀も30歳であり、若手にも働きやすく、活躍できる場をつくっています。
弊社の業務内容は内線部門、情報通信部門、送変電部門、配電部門の4つの部門に分かれており、様々な分野をワンストップで手掛けている総合電気設備企業です。
SDGsへの取り組みにも力を入れており、クリーンエネルギーの活用や地域貢献、教育活動といった実績を評価され、横浜市が実施する4つの認定・認証制度を全て取得した企業を対象とする「横浜グランドスラム企業」の表彰も受けております。

さて、今回のリニューアル事例のテーマ「お施主様の負担を減らすリニューアル~廃棄物処理施設等LED化ESCO事業~」についてご紹介させていただきます。
お客様は横浜市建築局様と資源循環局様です。横浜市内の廃棄物処理施設等全21施設の約11,000台の照明をLED化するという、横浜市にとっても過去最⼤規模のESCO事業でした。事業者の選定方法は公募型プロポーザル⽅式で、市内企業単独での提案により最優秀提案事業者に選定された初の案件でした。
弊社が横浜市のESCO事業の落札に至るまでには、様々な経緯がありました。横浜市では過去に2件のESCO事業があり、弊社もトライしましたが、どちらも市外の大手業者が落札するという結果に。地元業者として何とか受注できないかと色々な方々と相談した結果、横浜市電設協会から横浜市に、地元企業参入の機会創出をお願いした結果、障壁となっていた採点項目の見直しがされました。
見直された項目は次の2つの採点基準です。1つ目は市内業者率。これまでの審査基準では、市内業者率75%が加点上限でしたが、100%の枠を設けていただけることになりました。
2つ目は「ESCO事業の実績」の撤廃。実績のない新規参入業者に対して厳しい項目の撤廃により、地元の中小企業が参入しやすくなりました。この採点基準の見直し後、初めて地元企業である弊社が受注することができました。

これまでの失注理由から見直しを行い、
横浜市の要望も全面的に汲み取った提案を作成
さて、弊社の提案内容には大きく3つの内容がありました。1つ目は前回の失注理由から提案内容を徹底して見直したこと。2つ目は綿密な施工管理計画。3つ目は地元業者率が100%であることでした。
横浜市の要望を全面的に汲み取り、照明のLED化省エネルギー効果を向上させるため、先行して施設運営に影響の少ない事務所からLED化改修工事を行いました。早期の電気料金低減を計画し削減率72.8%を実現したことで、市の削減目標推進に大きく貢献すると評価いただくことができました。また、余裕を持った工事計画を組むために、契約締結前から詳細調査を行い、事前調査を早期に進行させることを提案。このように反省を活かした提案が総合的に評価されました。
施工管理計画については、21施設それぞれでお客様の要望をヒアリングし、各所に合った工事計画を作成しました。24時間稼働のごみ処理工場は止めることができないため、工事のエリア区分けと綿密なスケジュール管理が必要でした。施設によっては休日作業がNGの場合や、逆に休日に作業をしてほしいという場合もあり、各施設の要望に合わせた施工スケジュールを計画しました。
地元業者率100%は、工事から廃棄物処理に至る全ての仕事を市内業者に発注し、達成しました。
今回LED化を行った廃棄物処理等の21施設は横浜市内全域に点在しています。そのため、多くの工事会社に協力いただき複数体制で改修工事にあたることで、効率的に対応することができ、また横浜市の希望であった「地元業者率100%」を達成することができました。

スムーズな工事進行が顧客の安心感と
満足感につながり、より強固な関係に
全21施設合計で約11,000台の照明をLED化したことで、消費電力の総削減量は年間約309万kWh、電気料金は年間約6,400万円の削減に。
横浜市建築局の菅野様からは「当初は温室効果ガスを2030年に2013年度比で50%削減するという目標が、3年前倒しする方針に変わりました。この削減目標に大きく貢献してもらいました。また横浜市では市内中小企業の参入機会に努めることを条例でも定めており、地元業者への発注は責務でしたが達成することができました。これからも色々とお願いしていきたいと思っています」とのお言葉をいただくことができました。
横浜市資源循環局の草刈様からは「各施設の要望を吸い上げて完璧にこなしてくれました。施工後も各施設の地元工事会社によるアフターフォロー体制を組んでくれているので安心です」と評価いただくことができました。
同じく横浜市資源循環局の伊瀬谷様からは「工場各所が明るくなり、現場の作業性が良くなりました。これまでは切れた球交換作業が大変でしたが、メンテンナス作業も長期にわたって対応してくれるので、職員の負担が軽くなります」と現場から実感のお声をいただくことができました。
また、横浜市電設協会の理事長である会津電業株式会社の菊地社長からは「ESCO事業を東電同窓電気さんが市内業者で初めて受注されたことの意義は大きく、続いて弊社もESCO事業にチャレンジし、受注することができました」とのお声をいただきました。

大きな事業に対しチームで取り組み
ESCO事業の経験から民間顧客へも展開
今回の成功のもう1つのポイントは、チームで一丸となって取り組みができたことです。パナソニック横浜電材営業所の営業担当である原さんには、提案資料のブラッシュアップを始め、多大なご貢献をいただきました。初めてのことで分からないこともありましたが、パナソニックの様々なノウハウを教えていただいたおかげもあって、ESCO事業に挑戦することができました。この実績をもとに、今後は他の自治体や民間などにもESCO事業を提案していきたいと考えています。
成果としては次の3つを挙げることができます。1つ目は「顧客の信頼獲得」。今回の工事でご満足いただき、横浜市ともこれまで以上に強固な関係をつくることができました。2025年には新たにもう1件、ESCO事業を受注することができました。
2つ目は「民間へ提案する材料」となったこと。官公庁でのESCO事業受注経験を活かし、民間への提案にも広げていくことができます。
3つ目は「社内共有による横展開」。今回の事例を社内共有することで、他のメンバーが民間顧客へESCO事業の提案を始めており、新しいことへの挑戦という熱意を波及させることができました。
ESCO事業は規模が大きいことが多いため、敬遠される電気工事会社様もおられるかと思います。今回の我々のように、自治体、協会や組合、そしてパナソニックとチームを組むことで、想像以上に取り組みやすくなります。ぜひ皆さまもESCO事業に挑戦してみてください。
お施主様の声

保全推進課長
菅野 和広 様
東電同窓電気さんが今回ESCO事業を落札できたのは、市の評価基準の見直しだけでなく、前回失注理由の分析と対策がしっかりとできていたことが大きいと思っています。市内業者率の高さもさることながら、CO2削減率の高さや省エネ率の高さ、支払い期間が7年と短かったことが高評価のポイントでした。
地元中小企業様に取り組んでいただきやすいように自治体ができることとして、業者を募る際に、種類や数量などの仕様を明確にするなどの工夫をしたことも、功を奏したと考えています。
東電同窓電気株式会社様のお取り組みについて、リニューアルフォーラムでの発表のご様子を交えながら、動画でご紹介しています。


